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   乙女高原ファンクラブ 公認
 乙女高原メールマガジン 第042号 2002.3.4.
発行者:植原 彰 (乙女高原のある町・牧丘町在住)
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   ((( も く じ )))

1.【乙女高原リアルタイム・リポート】・・・・2002年3月3日の乙女高原

 ・ノウサギの糞とシカの足跡がいっぱい

 ・草原のゲレンデにジャンプ台 出現

2.【おたより紹介】・・・・霧ケ峰ネットワーク・三井健一さん

 ・乙女高原での保全活動について

 ・霧ケ峰での刈り取り実験

 ・草原管理の方法

 ・刈った草をどうするか

3.【乙女高原ファンクラブの次回の催し】・・・・2002年3月23日

 総会と第1回 乙女高原 自然フォーラム

   西丸震哉氏 講演会 「西丸流:自然とのつきあい方」

ご意見/ご感想/情報はこちらに・・・
     [mailto:xxxxxx@j-gate.net]

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     【乙女高原リアルタイム・リポート】

      2002年3月3日の乙女高原
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 日曜日、久しぶりに乙女高原に向かいました。そま口林道で柳平経由で行きました。

焼山峠の直前が工事中で、道がとてもぬかるんでいて、このまま車を進めたら、

泥にハマッて動けなくなりそうだったので、そこに車を置いて、徒歩で乙女を目指し

ました。

 昨日とは打って変わって肌寒く、雪もちらついてきました。日陰にはまだまだ大量の

雪が残っていて、何か見つけて写真を撮ろうと踏み入れると、ズボッと長靴の中まで

雪が入ってくるほどです。

 車を使っていたら、絶対に見逃してしまっただろういろいろな「発見」を楽しみな

がら歩きました。例えば、所々で見つかるテンやキツネのうんこ。明らかにおいしい

木の実の種が入っている秋の糞とちがって、灰色でドロドロしているような糞です。

季節によって、食べ物によって、同じ動物でもうんこの色や感じは違うんですね。

 車道のある決まった場所だけ、どういうわけか落ち葉や小石が多いことも気になり

ました。その前後はほとんど何もないのに、どうして、ここだけ落ち葉がたくさんなの???

 そのヒミツはどうやら道脇の斜面の上から少しずつ滑り降りてきた雪にある

ような気がしました。本当にゆっくりしたスピードの小さな雪崩の「おみやげ」なん

じゃないかと・・・・。

 

    ■ノウサギの糞とシカの足跡がいっぱい■

 途中、車道から遊歩道に入りました。人の足跡はまったくありませんが、ひづめが

2本ある動物の足跡がいたるところについていました。この近辺でシカを目撃してい

るし、その形状からシカに間違いないとにらんでいますが、たとえば糞などの決定的

な証拠を見ているわけではないので、イノシシという可能性も捨てられません。

 どっちにしろ、すごい頻度で足跡が見られました。始めのうちは面白くてパチパチ

写真を撮っていましたが、そのうち、あまりにも多いので、写真に撮るのもおっくう

になってしまいました。

 所々、雪に木の棒でも刺したんじゃないかと思われるような、筒型の穴を見かけま

した。覗き込んでみると、底に必ずウサギの糞が入っています。どうやらウサギの糞

の色が雪の白よりずっと日光によって温まりやすく、そこだけ雪が余計に解けて、糞

が沈み込んでいったらしいのです。

 そう考えてみると、確かに枝が落ちていたりすると、やっぱりその枝の形に雪がく

ぼんでいます。

 モミの枯れ木が落ちていたところなんて、枝をどけてみたら、「雪に書いたクリス

マスツリー」といった風情になりました。

 

   ■草原のゲレンデにジャンプ台 出現■

 そんな道草を食いながら歩いていたもんですから、なかなか乙女の草原に着きませ

んでした。そうそう。柳平で一つがい、焼山でも一つがい、乙女でも一つがいのハシ

ブトガラスを見ました。都心のカラスと違って、どんなものを餌として獲って食べて

いるんでしょう? こんな山の中で真っ黒い大きな鳥を見ると、なんか神々しく見え

てくるから不思議です。

 ようやく草原に着きました。雪が結構あります。そして、人の足跡やスキーの跡も

見えます。そして・・・、思わずニコッとしちゃったんですが、なんと草原(ゲレンデ)の

真ん中にジャンプ台が作ってありました。

 長靴がほとんど埋まるぐらい雪が積もっていましたが、近寄って、台の上に上がっ

てみました。1メートル以上の高さがありました。見下ろすと、なかなかいい気分です。

 ゲレンデ裏のブナ林にも行きました。そして、ブナのじいさんにも会ってきました。

 前回発見したシカの皮はぎ(メールマガジン040号)跡に、また行ってみました。

 今回はそこでシカ道を見つけました。明らかに何頭かのシカが斜面を横切って歩い

ているので、そこが道のように見えるのです。

 また、前回は皮はぎしている木を断定できなかったのですが、今回、双眼鏡で見上

げてみると、枝になにやら付いています。枯れた実のようです。そこで、地面を丹念

に見つけたら、枯れた実が見つかったので、持ち帰りました。調べてみたら、どうも

マユミのようです。シカはマユミの巨木の幹をかじっていたらしいのです。

 

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■2■
    【おたより紹介】

        三井健一さん

   (霧ヶ峰ネットワーク、信州大学大学院農学研究科)
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 山梨県出身の大学院生(信州大学)三井さんからお便りをいただきました。霧ケ峰

で実際に保全活動にも携わっていらっしゃるという三井さんのお便りには、乙女高原

の保全活動のヒントになりそうなことがたくさんありましたので、ご本人の了解をいただき、

私信を除き、ここに転載させていただくことにしました。(植原)

 

    ■乙女高原での保全活動について

 今、里山ブームで雑木林に関する里山ボランティア活動は大変盛んになってきてい

ますが、里山(里地)の構成要素であるいわゆる採草地にはあまり目が向いていない

のが残念です。

 面積的に小さいということもありますが、小さいということはそれだけ草原生態系

が危機的な状態にあることを示しています。秋の七草の咲くススキ草地など、ほとん

ど見られなくなってしまいました。

 そんな中で、乙女高原ファンクラブのような形態で、草原を保全していこうという

取り組みには非常に衝撃を受けました。それは、私が霧ヶ峰において草原保全を考え

た時に、同じような事を考えたからです。そして実際にその方法で取り組み、実績を

あげていらっしゃるということに感動し、霧ヶ峰でも出来るかもしれないという希望が

湧いてきました。

 島根県の高橋さんが昨年の草原シンポでおっしゃっていたことがあります。

「草原は日本において非常に少なくなってきている。これは危機的な状況である。

しかし、逆にそれは草原が非常に貴重であり、草原自体の価値を高めるチャンスで

ある」と。

 そのとおりだと思いました。草原には採草・放牧という農業的な生産的価値もあり

ますが(阿蘇のように)、現在ではそのような農業的な利用形態自体が成り立たなく

なってしまい、それが草原の危機をもたらしています(乙女高原の場合はスキー場で

したよね)。

 使い道が無いと草原を放置して遷移させて荒れさせてしまうよりは、草原のもつ価値

を新たに見つけることが重要になっています。草原の生物多様性や草原と人間のか

かわりの中で育てられた文化、そして草原のもつ美しさなどなど、生産的な価値では

ないけれど、草原のもつ魅力はまだまだ未知数だと思います。そんな中で乙女高原で

の活動は草原に対して新たな価値を見つけてうまく相互に良い関係を作っている先進

的な例だと思います。

 

   ■霧ケ峰での刈り取り実験

 私も霧ヶ峰で草刈り実験をしていますが非常に大変ですよね。霧ヶ峰はとりあえず

広いのでススキ草原とササ草原で方形区をつくって刈取り実験をしています。それに、

霧ヶ峰において遷移が進行し繁茂してきたノリウツギやレンゲツツジなどの低木についても

個体ごとに刈取り実験しています。

 刈取り回数や刈取り時期を変えてやっていますが、今のところ刈取りという行為自体は

植物の多様性を高めるのに効果的だという結果が出ています。低木類やススキやササ

などの優占種の繁茂を抑制することによって、より多くの種が共存できる群落構造

(光環境など)になるからです。

 ただ、刈取りの頻度や時期によって与える影響はまちまちです。

 霧ヶ峰の場合、6月はスミレやチゴユリ、スズランなど背の低い階層構造の下部の植物が

咲きますが、草刈りや火入れが行われず、ススキやササが繁茂しその上に覆い被さり、

光環境が悪い場合にはこれらの植物の生育に悪影響を及ぼします。土地の人に聞くと、

昔はスズランの大群落があって風が吹くと一斉にスズランが音を立て、うるさいくらいだった、

と言う話もあるくらいだったのですが、採草や火入れが行われなくなってから、これらの植物が

減少しているそうです。

 ニッコウキスゲやノアザミ、ヨツバヒヨドリなど背の高い植物は、ススキやササの間からうまく

葉を出し光合成をするためそれほど影響がないのですが、それでも年々減少しているとか。

マツムシソウなども遷移の初期に出現する種なのですが、遷移が進んだ為、あまり見られ

なくなっています。

 このような点から、霧ヶ峰において生物多様性の高い草原を保全するには低木やススキや

ササなどの優占種を抑制するような刈取りをすればいいのですが、今のところススキは8月

終わり頃、ササは6月ごろ、低木は7月はじめ頃という結果が出ています。

 一般的に多年生植物は前年光合成し地下部に蓄積した養分を使って展葉します。そして、

展開した葉で光合成を始めるのですが、地下部の養分から光合成の養分に切り替える初夏

あたりに地上部を除去すると、地下部は展葉のために養分をほとんど使い果たし、なおかつ

地上部では光合成器官である葉を除去され光合成が出来なくなるので、養分が生産できず、

かなりのダメージを与えられる事が知られています。また、多くの植物は花を咲かせるときに

もっとも地上部に栄養分を送りますので、その時に地上部を除去するのも効果的です。

 乙女高原では秋頃に刈取りをされていますが、これは枯れ草の除去(翌年の春の光環境

の向上→春・初夏の植物の増加)、刈取りの際の種子の散布(種の増加)、という効果が

あります。ただ、除去したい種の種子まで散布される可能性があります。

 

    ■草原管理の方法

 まず草原の管理目標(植生)を設定し、その植生をつくりだすための管理をする、

ということになるのですが、そのためにはまず植生調査によって植生の現状把握(遷移

系列上のどの段階にあるのか)をしなければなりません。そして、管理目標を設定します。

 刈取り方法によって様々な植生に持っていく事が出来るので、存在する各植物の生態を

理解し、どの種を増やしたいかという目標に応じてその生態に合わせた刈り取り

をするのですが、植物は相互に影響しあっているのである種だけに注目して刈取りを

おこなっても、そう簡単に目標植生に持っていくことが難しいのが現状です。

 よって、刈取り実験をおこなって試行錯誤しながら管理を行う必要があります。そして

重要な事は昔どのような管理が行われ、どのような草原だったかということを知る事です。

そして先人たちの知恵を借りつつ、現状に合った管理を行ってゆくことが必要ですよね。

 また、大面積で同一の管理をすると均一な草原になるので、草原内でもゾーニング

をおこなってそれぞれ管理方法を変えることによって、環境的に多様な草原を作ること

が可能です。

 

   ■刈った草をどうするか

刈取った草をどうするかという問題は、基本的には除去するというのが良いようです。

なぜなら、普通、採草地として利用されてきた草原は昔から草が持ち出されてきたこと

によって、貧栄養の状態にあり、その貧栄養の状態こそが草原性植物の生育に

適しているからです。草が持ち出されなくなると、土壌が富栄養化し、ススキなどの

優占種のみが繁茂する多様性の低い草原になります。貧栄養状態が優占種の繁茂を

抑え、それが多様な植物の共存を可能にするそうです。

 また、刈取った草を放置すると、その草の下の植物は光環境が悪化し生育が悪くな

るということもあります。

 ただ、耐陰性の強い植物が生育可能になります。よって、管理方法としては、ある

場所は苅草を除去し、ある場所に苅草を集めるということでより多様な植生をつくる、

ということも出来ると思います。

 

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■第1回 乙女高原 自然フォーラム■

  西丸震哉氏 講演会

  「西丸流:自然とのつきあい方」

日時 2002年3月23日(土)  15:00〜17:00

会場  牧丘町民文化ホール「花かげホール」

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 詳細は前回のメールマガジンでお知らせしたとおりです。

 2時から乙女高原ファンクラブの年次総会

 3時から乙女高原自然フォーラムの開催・・・・です。

 

 今、西丸さんの本を何冊か借りて読んでいますが、とにかく言っていることがとて

も明確で分かりやすく、いわゆる「ざっくばらん」で、とっても親しみがもてます。

 プロフィールを見ると、かなりご高齢だなという印象を受けますが、2月にはマレ

イシアに探検に行ってこられたそうです。

 当日は、おもしろくて、ためになって、ふと考えさせられるようなお話が聞けるの

ではないかと楽しみにしています。

 講演会後、西丸さんとぼくとでトークショーを行う予定です。西丸さんに聞きたい

ことがありましたら、メールをください。

 

  ●第1回乙女高原自然フォーラム プログラム●

         2002年3月23日(土)

・14:00−14:45 乙女高原ファンクラブ総会

・15:00−16:50 第1回乙女高原自然フォーラム

  第1部  15:00〜16:10 講演  「西丸流:自然とのつきあい方」    

       西丸 震哉氏 (食生態学者、登山家、探検家)

  第2部 16:10−16:50 対談「西丸さんに、聞きたい!」

        講師の西丸 震哉氏に、自然とのつきあい方や乙女

        高原での保全活動について、乙女高原ファンクラブ

        代表世話人の植原 彰がお聞きします。

 

※会場ロビーでは、乙女高原での実践活動についての資料展示等 を行います。

※会場でも乙女高原ファンクラブへの入会を受け付けます。

 

■主 催  乙女高原ファンクラブ・山梨県・牧丘町

■参加費  無料

  (ただし、資料を用意する都合上、事前にお申し込みください)

■申込方法 電話、FAX、、E−mailにて担当者までご連絡ください。

■担当者:牧丘町地域活性課 乙女高原の森係及び乙女高原ファンクラブ事務局

       0553ー35ー3111(内線141)
     Fax  0553−35−3733
    otome@town.makioka.yamanasi.jp

    ●講師等プロフィール●

◎西丸 震哉氏

 1923年(大正12年)東京生まれ。食生態学者、登山家、探検家。

 「昭和34年以降生まれの日本人の平均寿命は41歳」・・・1990年に出版された「41

歳寿命説」というベストセラーがあまりにも有名です。この本は、環境の汚染や食生

活の変化、つまりは現代社会や現代人の生きかたへの警鐘の書でしたが、それは西丸

氏のライフワークである食生態学分野での研究から得られた結論でした。

 また、年間100日は山にこもるという登山家でもあり、ガダルカナル、ニューギニ

ア等を訪れる探検家でもあり、さらに、作曲もすれば、絵画も手がけ、SF作家でも

あるというマルチ・タレントです。斉藤茂太さん、永六輔さんなど幅広い交友関係も

お持ちです。

 山梨県内に別荘を持ち、県内の地域づくりグループとも親交があるなど、山梨県と

もゆかりのある方です。

・著書 「41歳寿命説」情報センター、「山の博物誌」実業之日本社、「食生態学入

門」角川書店など多数。

 

◎植原 彰

 1962年(昭和37年)牧丘生まれ。乙女高原ファンクラブ代表世話人。自然観察指導

員。山梨県環境アドバイザー。

 小学校の教員をやりながら、ライフワークとして乙女高原の保全活動に取り組んで

います。自分の軸足はつねに乙女高原に置きながらも、県内さらには県外の「自然を

守り、大切にする活動」のお手伝いをしています。 

・著書「ぼくらの自然観察会」地人書館、「学校で自然かんさつ」同、「いつでもど

こでも自然観察」同 他。

 

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 乙女高原メールマガジン 第042号 2002.3.4.
    発行者:植原 彰  (xxxxxx@j-gate.net)
※この号は272人の読者の皆さんにお届けしています
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