□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■    乙女高原ファンクラブ 公認  乙女高原メールマガジン 第049号 2002.6.16. 発行者:植原 彰 (乙女高原のある町・牧丘町在住) □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■    ((( も く じ ))) 【乙女高原ファンクラブ活動リポート】 ・草原ボランティア2002  遊歩道のメンテナンス(6月9日) 【オピニオンのページ】 ・乙女の遊歩道つくりは「場当たり的」ではないのか?      (植原 彰/NACS−J自然観察指導員) ------------------------‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ご意見/ご感想/情報はこちらに・・・      [mailto:xxxxxx@j-gate.net] バックナンバーをご覧になりたかったら・・・・    http://www.otomekougen.npo-jp.net/mailmagajin.html 乙女高原ファンクラブのホームページは・・・・・    http://www.otomekougen.npo-jp.net/ ======================== 【乙女高原ファンクラブ活動リポート】   ・草原ボランティア2002  遊歩道のメンテナンス      2002年6月9日 ========================  6月9日はこれ以上ない晴天。その上,風が強いため,かすみが吹き飛ばされ,遠く の景色がくっきり見えます。大きな沢に沿って残雪が残る富士山の姿がきれいに見え ています。  有名なレンゲツツジンゲはほぼ満開。真っ青な空をバックに,一株一株微妙に色の 違うオレンジ色がとてもきれいです。  「今日はきっと大勢の人が来るぞ」と思いました。  この日の作業には大人・子ども合わせて15人が参加しました。二手に分かれ,1本 1本の杭を手で押してグラグラしないか確かめ,グラグラするようだったら「かけや (大きな木のハンマー)」で打ち直し,たるんだロープを張りなおしました。  皆さん,なかなか完璧主義で,少しでもロープがたるんでいたら,ことごとく張り なおしていったものですから,作業が終わると,ピーンとした,見るからに凛々しい (りりしい)遊歩道になりました。  11時すぎには作業が終わり,解散。有志でお弁当を食べました。  そして,午後からは,これも有志で「シャクナゲ遊歩道」を歩いてみました。シャ クナゲはもう咲き終わっていましたが,乙女の草原やまわりのミズナラ・ブナ・カラ マツ林とまた違った雰囲気の亜高山帯の針葉樹林の中をゆっくり歩きました。 ======================== 【オピニオンのページ】 ・乙女の遊歩道つくりは「場当たり的」ではないのか?      (植原 彰/NACS−J自然観察指導員) ========================  「シャクナゲがすごい群落を作っているところがあるんだよ」 という話を聞いたのは,確か一昨年の今ごろだと思います。そこへ行くには,「その 手の人」しか知らないような作業道を通って行くのだそうです。たいへん気になった ので,昨年の10月,実際に歩いて,シャクナゲの様子などを観察してみました。気に なることもありましたが,一般の人が入り込まないような場所なので,大丈夫だろう と思いました。  今年のシャクナゲの開花期に,またこのコースを歩いてみました。  コースの入り口は「その手の人」にしか分からないようになっていたはずなのに, あれ? 道標がある! シャクナゲ群落を通過し,昨年10月に迷いそうになったとこ ろに,あれっ? きれいな木の階段が作られてる! しかも,新しい道が取り付けら れていたので,その道をたどって歩いてみると・・・,あれっ? いつのまにか林道 に出てしまいました。  結局,ぼく(ら)の知らない間に,「シャクナゲ遊歩道」が「それとなく」作られ ていたのです!  この作業道,歩いてみて分かったのですが,シャクナゲ群落のど真ん中を通ってい ます。道幅の分が整備されてしまったものですから,多くのシャクナゲがたわんで, 頭を垂れたような状態になっています。群落の中は暗く,林床の植物はほとんど見ら れません。一部,樹冠が空いた地面にだけ,シャクナゲの子どもが育っていました。  ですから,この道が「ごくごく少ない人がたまに歩く」という使われ方をするのな ら,群落に対する影響もまあそんなにないと思いますが,「ある時期に,不特定多数 の人が集中して歩く」という使われ方をするとなると,危ないのではないかと思いま す。  「美しい花がある→みんなに見せたい→遊歩道を作ろう」というのが,この遊歩道 つくりのきっかけだと思います。作ることに反対すると「じゃあ,一部の人だけが楽 しめばいいの?」と後ろ指さされそうですが,やっぱり問題だとぼくは思います。  第一に,ここで遊歩道を作ってしまうことによって,ぼくらの子孫がシャクナゲの 花を楽しめなくなる可能性があります。だって,保全策がなにもないのに,遊歩道だ け作ろうということなんですもの。「こういうふうな保全策をとります」という前提 があった上で作るのなら,わかりますけど。  実際,焼山峠西の頂上広場においては,1993年の生活環境保全林整備事業によっ て,あんなに多かったヒカゲツツジの群落がほとんどなくなってしまいました。この 「事実」を踏まえて,ぼくは「シャクナゲ」の可能性を言っているのです。  第二に,確かにきれいな花を見せたいという気持ちはわかるけど,シャクナゲも乙 女高原に生きる一員として,子孫を残し,代代ここで生きていく「権利」がありま す。その「権利」を奪う可能性がある遊歩道はやっぱりよくないと思います。やっぱ り保全策が前提条件です。  第三に,これが一番問題だと思うのですが,乙女高原にどんな遊歩道をどこに作ろ うかという「全体計画」(「枠組み」と言い換えてもいいし,「ルール」と言い換え てもいいと思います)がないままに,言葉は悪いですが,そのときそのときの予算や 担当者の意図によって「場当たり的」に遊歩道が作られていることです。  さっきもちらっと言いましたが,1993年の生活環境保全林整備事業によって,焼山 峠から乙女高原の間に多くの遊歩道が作られました。ところが,地図が描かれた看板 などがまったくと言っていいほどありません。ですから,この遊歩道を行けば,どこ に出るか,利用者には全然分からないのです。こんな遊歩道,誰が使うと思います?  「遊歩道を作る」というハード事業は,「作った遊歩道を,どう使ってもらうか」 というソフト事業を伴い,しかも,その前提条件として,「自然を(できるだけ)そ のまま残し(だって,自然あっての遊歩道でしょ?),保全策をきちっと立てておく ことが必要です。  また,「多くあればあるほどいい」というものでもないでしょう。「このエリアで は面積あたり,この程度まで作りましょう」といった「基準」が必要です。「こうい うところには作りますが,こういうところには作りません」という評価基準も必要で すよね。  大変めんどくさい作業をしなければならないわけですが,遊歩道を作るのなら,そ ういう手続きをきちんと踏んでいただきたいと思います。  それがないまま,遊歩道だけ作ろうというのは,ぼくは絶対反対です。作るだけ無 駄だし,自然にとってもいいことはありません。  最後に・・・・  乙女高原とも草原の保全ともぜんぜん関係ないんだけど,三番瀬というところを 知っていらっしゃるでしょうか?  東京湾奥部に残された最後のまとまった干潟であり,開発か保全かでゆれてきて, 千葉県に堂本知事が誕生したことで,開発計画が白紙撤回されたところです。  そこをどう復元していくか,地元の人,行政マン,環境NGO,学識経験者等を集 めての円卓会議が開かれています。その席で,日本自然保護協会の吉田常務理事が, 自然復元の7つの原則を明快に述べています。(「三番瀬署名ニュース」No31, 2002.6.1.より)  乙女高原で遊歩道を作ることについても,自然に手を加えようというのですから, この7原則が非常に参考になると思います。 1.今ある自然を大切に 2.特定の種だけでなく,生物のつながりや生態系を復元する。 3.もとあった種を回復する 4.点の回復でなく,空間的な生態系のネットワークの回復 5.人間が創りあげるのでなく,自然の回復力を助ける。 6.自然の変化をモニタリングしながら順応的な管理をする。 7.行政だけでなく,計画段階から地域の市民参加を図ること ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆  乙女高原メールマガジン 第049号 2002.6.16. 発行者:植原 彰  (xxxxxx@j-gate.net) ※この号は275人の読者の皆さんにお届けしています ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇