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 乙女高原メールマガジン 第7号・・2001. 1.20.
発行者:植原 彰 (乙女高原のある町・牧丘町在住)
Eメールアドレス  xxxxxx@j-gate.net
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   (((植原からのメッセージ)))

 みなさん,ごぶさたしております。
 1月7日の夜に降った大雪のため,乙女高原までは車ではちょっと行けなくなりました
(林務事務所の方の話によると,積雪は40センチくらいだそうです)。
・・・と昼間,書いたと思ったら,午後から山梨は大雪。ウチの庭にももう20センチは雪が積もっています。

 また,昨年3月に行われました『乙女高原を語る』というパネルディスカッション
を中心としたイベントの記録集を作る作業に追われていまして,それも乙女に行けない
理由の一つです(3月までには,このメールマガジンで,記録集の『予告』ができると思います。ご期待ください!!!)。

 さて,今回は,大分県の足立高行さんからの寄稿を載せます。足立さんは,
阿蘇久住国立公園という,日本を代表する草原景観をほこる地域をフィールドに活動して
いらっしゃいます。足立さんの文章の中には,乙女高原での活動のヒントがたくさん
あります(例えば,まず,『どんな土のところなのか』から調べ始めているところ)。
ぜひ,じっくり読んでみてください。足立さん,貴重な原稿をありがとうございました。

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  九州大分 久住高原での野焼きや採草
       足立 高行
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  【はじめに】
 阿蘇くじゅう国立公園で行われている、野焼きや採草の話を始める前に、この地域
の特徴である土壌の話をしておきます。
 「黒ボク」という土壌について…黒ボクは久住地域を代表する(覆い尽くす)土壌です。
その名のとおり色は黒く、適湿状で,手で叩くと「ボクボク」という音がします。
物理的性状は空隙が多くやわらかいという特徴を持っていますが、乾燥するとパウダー状に、
雨が降ると固く締まってしまいます。裸地では流出しやすくなります。
 化学的にはアルフェンという粘土の一種で、アルミニュウムとケイ酸の化合物です。
ケイ酸は流出しやすく残留しません。一方、アルミニュウムは残ってしまうのですが、
アルミニュウムは有機物と結合してしまい腐植物が留まることになりなす。これが黒い理由です。
 特に、リン酸とは強く結合し、リン酸アルミニュウムとなります。これは植物が利用できる形状ではありません。
養分はあるのだが、利用できないという事態です。
 もともと火山性土壌はカリュウムが少なく、酸性が強いという特徴がありますから、
「強酸性」「リン不足」「カリ不足」という状況が久住の土壌の性状です。

  【草原の維持】
 こうした土壌条件のなかで成立した草原植生ですから、下手な人為利用を続けると
植生は即座に後退をはじめます。
1)放牧
 過放牧が起きると、草原は後退します。ススキは後退しネザサが主流となります。
場所によってはトダシバが優占。ひどい場合は裸地化しますが、この場合は放牧地を
移転させますので、ここまでひどくはなりません。
2)採草
 採草(当然持ち出しです)には、作業時期の問題と頻度の問題がかかってきます。
  ●時期の問題
 6〜9月の草刈りは、ススキそのものに対するダメージが大きく、ススキは後退を
はじめます。そして、トダシバ型の草地になってしまいます。
 5月および10月以降の採草はススキにはダメージが少なく、元来久住での採草は
この時期に行われてきました。しかし、人工牧草地の広がりとともに、在来草地であ
るススキ型の草地も、人工草地の採草と同時期に行われることがまま発生しておりま
す。(一部は観光目的だったりします)
  ●頻度の問題
 草刈りを行った翌年は、春の芽立ちが良くないという場所があります。また、連続
して草刈りをしても同様に成長が悪くなってきます。そうすると、採草を止め次の年
には野焼きがおこなわれます。もともと土壌条件がよくありませんから、成長が良い
といっても河原のススキのようにはなりませんが…
 特に、1年毎に採草と野焼きを繰り返す場所を「古野」と呼んでいるところもあります(阿蘇地方)。
3)野焼き
  野焼きの目的は、端的には
  1,枯れ草が混じると刈り取りの邪魔になる。
  2,森林移行の阻止とイネ科植物の生育保持・・・です。
 現在では、農耕理由が希薄になってきましたので、景観維持という観光目的が
これに入ってくるのでしょうか。

 以上が久住で行われている採草作業の主なものです。牛の放牧をはじめこれらの
作業から、刈った草を放置するということはまったく見られません。
 以下に、なぜ刈った草を放置しないかという理由を私なりに考えてみました。

  【久住での特性】
 ススキなどの高茎草本は分解が遅く(悪く)、放置すると永くその場に残ってしま
います(だから茅葺きがあるのですが…)。特に、翌年が渇水だったりすると1年以上
残る場合もあります。そうでなくても、翌年の初夏までは確実に残ってしまいます
から下部に生育する植物は覆圧されずにはおれません。
 たとえば、トタンを一枚草原の中に置いたと仮定すれば解りやすいと思います。
トタンの下の植物は消滅する以外にありません。

 多分、この理由が刈りっぱなしにして放置しない大きな理由だと思います。
そして、野焼きの理由もここにあるのかも知れません。
 この理由が乙女高原で通用するとは思いませんが、「毎年の草刈り」「連続放牧」
などが否定され、結構草原の現況を見ながらフレキシブルな管理が行われて来たもの
と思います。

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)))乙女高原ファンクラブ 第4回設立準備会(((
       日程の変更のお知らせ
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 ファンクラブ日程変更のお知らせが間に合わなかったのですが,都合により一週
間,延期されました。今度の金曜日です。よろしければ,のぞいてみてください。

○日時 2001年1月26日(金) 午後7時半〜9時半
○場所 牧丘町役場
 役場正面玄関からでなく,東側の出入り口からお入りください。

○話し合う内容
 ・ファンクラブの設立総会について
 ・ファンクラブの活動内容について 他

 どうぞ,来てください。当日参加できなくても,メールにご自分の思いやアイデア
を託すという方法もあります。準備会メンバーへのメッセージでもかまいません。
ぜひ,メールでお届けください。

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  『乙女高原メールマガジン』とは? (再録)
         植原 彰
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 乙女高原は,わが町・牧丘町にある標高1700メートル・亜高山帯の草原です。
まわりは森なのに,ここだけは約3.4ヘクタールの広さの草原です。初夏のレンゲ
ツツジや夏のお花畑のような景観が有名です。

ぼくは,この乙女高原に魅せられ,20年間に渡って通い,自然観察を続けていま
す。今では自分にとってかけがえのない場所になってしまい,乙女高原の自然を守るために
自分にできることは何でもやっておきたいと思っています。このメールマガジンも,
ぼくにとっては,乙女高原の自然を守るための一つの手段です。

 このメールマガジンでは,ぼくの目を通しての季節ごとの乙女高原の様子や,ぼく
が知っている範囲での乙女高原に関する様々な取り組みについて紹介します。

お名前とメールアドレスを教えていただければ,希望者に無料で配信します。
また,ご迷惑でしたら,ご一報くだされば,配信を停止します。できましたら,お友達
等にも紹介してください。できるだけ多くの人に乙女高原のことを知ってもらいたい
し,乙女高原の自然を守っていくために多くの人からアドバイスをいただきたいと考えています。

皆さんからのご感想,ご投稿を楽しみに待っています。

 (((((バックナンバーのお知らせ)))))
  (この号は170人の読者にお届けしています)

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