file No. 0208
Date 2002/8/27
タイトル 夏休み自由研究「マルハナバチ」


前回からだいぶ時間がたってしまいました。遅くなり,すみません・・・仕事が忙 しかったもんで・・・
さて,マルハナバチがおもしろくて,観察会の翌々日には(・・・といっても,も う1ヶ月も前の話です)乙女へ行って,マルハナバチを観察しました。ぼくの夏休み 自由研究です。

●自由研究 その1●
林道沿いのツリフネソウがたくさん咲いているところに陣取って,マルハナバチ類 が何回来るかカウントする。また,気付いたことをメモする。

最初は30分もいれば十分だろうと思っていました。ところが・・・
マルハナバチ類が来ると「おっかけ」をして,観察します。ハチのしぐさを見るの がおもしろくて,また,来てくれないかなあと期待して待ってしまいます。少し時間 がたっても来ないと,そろそろやめようかと思うのですが,ちょうどそのタイミング でまた来てくれるので,また,おもしろくなり・・・と,結局,延々1時間半も一箇所 にねばっていました。

■観察結果 その1
2002年8月27日午前7時10分から8時40分の1時間半の間に

  • ナーちゃん(ナガマルハナバチ)がツリフネソウ(キツリフネを含む)群落を訪れた のは,のべ39個体。(平均2.3分に一回)
  • ミーちゃん(ミヤママルハナバチ)がすぐ近くのアザミの花を訪れたのは,のべ 24個体。
  • トラちゃん(トラマルハナバチ)が同じアザミの花を訪れたたのは,のべ11個体。

■観察結果 その2

左の写真を見てください。ナーちゃんの胸部の背中側が,なんか縦に割れているように 見えませんか?見ていると,どの個体も背中が割れているように見えるのです。 図鑑の図(鷲谷いづみ他「マルハナバチ・ハンドブック」文一総合出版)は,こんな ふうではありません。
どうして背中が縦に割れてしまうのでしょう?
それは簡単に察しがつきました。ナーちゃんは右の写真のように,ツリフネソウの 花の中にほぼ完全にもぐりこんでしまいます。ですから,ツリフネソウの筒状の花の 天井に当たる部分に下向きの突起物があれば,花にもぐりこむナーちゃんの背中に こすれるように当たり,まるで背中が割れてしまったように,ここだけ毛がこすり 取られてしまうのではないかと,容易に考えられました。

ツリフネソウは左の写真のような,おもしろい形をした花をつけます。まるで舟を 吊り下げているようなので,ツリフネソウです。じつは,身近な花としては,ホウセ ンカがツリフネソウの仲間です。よく見ると,ツリフネソウと同じく「花を吊ってい る」のが分かりますよ。
お尻のクルクル・カールがかわいいでしょ?!花の色が黄色いキツリフネのお尻は カールしていません。
さて,花を正面から見てみました。右の写真です。
どうです?まるで四畳半の部屋の天井から裸電球がぶら下がっているみたいでしょ? 思った通り!って思いました。これがツリフネソウのおしべやめしべだそうです。

ツリフネソウの花にもぐりこむたびに,ナーちゃんの背中がこれに当たってこすれ てしまうので,独特の割れたように見える模様ができるんですね。この模様は,ナー ちゃんが確実にツリフネソウの受粉を助けている証(あかし)なんだなと思いました。
そう言えば,花から出た直後に,背中に足をやって,まるでかゆいところをかいて いるように見えるナーちゃんを見たことがあります。


●自由研究 その2●
同日,乙女高原の草原内の遊歩道をゆっくり歩きながら,見られたマルハナバチ類の 種類と数,そして,訪れていた花を全て記録する。

鳥の,おもに個体数の調べ方としてライン・センサス法というのがあります。調べ たい場所で,あるルート(おもに道)を,決められた(ゆっくりした)スピードで歩き ながら,見かけた鳥の種類と数を全て記録するという方法です。
これをマルハナバチでやってみようと思いました。
もちろん,これで乙女高原のマルハナバチ類の個体数が分かるなんて思っていませんが, どんな種類のマルハナバチが,どんな割合で,どんな花にいるのが見られるのか, その相対的な傾向はつかめるのではないかと思います。

■観察結果

  • ミーちゃん(ミヤママルハナバチとの出会い)・・・合計のべ68個体
    【見られた花】
    ・ヤマハギ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(41個体)
    ・ノハラアザミ●●●●●●●●(9個体)
    ・タムラソウ●●●●●●●●(8個体)
    ・タチフウロ●●●●●●(6個体)
    ・マツムシソウ●●(3個体)
    ・ツリガネニンジン(1個体)

  • トラちゃん(トラマルハナバチ)との出会い・・・合計のべ30個体
    【見られた花】
    ・ノハラアザミ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(22個体)
    ・マツムシソウ●●(3個体)・・・花粉集め
    ・ヤマハギ●●(2個体)
    ・タムラソウ(1個体)
    ・ヤナギラン(1個体)
    ・マルバダケブキ(1個体)

  • オーちゃん(オオマルハナバチ)との出会い・・・合計のべ18個体
    【見られた花】
    ・ノダケ●●●●(4個体)・・・花粉集め
    ・ヤマハギ●●(3個体)
    ・イタドリ●●(3個体)・・・花粉集め
    ・タチフウロ●●(2個体)
    ・ノハラアザミ(1個体)
    ・ワレモコウ(1個体)
    ・マツムシソウ(1個体)
    ・シオガマギク(1個体)
    ・ヤナギラン(1個体)
    ・ヒメトラノオ(1個体)

  • ナーちゃん(ナガマルハナバチ)との出会い・・・合計のべ1個体
    【見られた花】
    ・ツリフネソウ(1個体)
※まるで花の上を掃除機の先でブラッシングするように動いているのは花粉集めを している個体です。あきからにそのような行動をしているものについては「花粉集め」 と表記しました。

■考察

  • 合計4種のべ117個体のマルハナバチ類に出会いました。
  • そのうち,60%近くがミーちゃんでした。統計的には,この時期,マルハナバチ類が 花に来ているのを見て,「あれはミヤママルハナバチです」と言って,当たっている 確率は約60%ということです。「ミヤマかトラですねえ」といえば,確率は84%に 跳ね上がります(?!)。
  • 一番多かったマルハナバチ類と花の組み合わせは「ミーちゃんとヤマハギ」でした。 この時期,マルハナバチ類を見ようと思ったら,ヤマハギの前でミーちゃんを待ち伏せ するのが一番効果的ということです。
  • この時期,いろんな種類のマルハナバチ類を見たいと思ったら,ノハラアザミの前で 待つのが一番いいと思われます。ノハラアザミは,トラちゃんで一番人気,ミーちゃん では2番人気,オーちゃんも来ていて,いろんなマルハナバチ類から広く支持を集めて いるようです。
  • 他の3種はまさに草原内の花に来ていましたが,ナーちゃんだけは,湿地に咲く ツリフネソウに来ていました。遊歩道が一箇所だけ湿地を通っていて,そのときに 見られました。この時期,草原だけを歩いたのでは,ナーちゃんには出会えないでしょう。

「自由研究」をやってみて,別の季節に同じような調査をやってみて,季節による変化を 比較してみるとおもしろいだろうなあと思いました。


ウエちゃんの乙女高原自然観察記の一覧へ戻る


「ウエちゃんの乙女高原自然観察記」を読んだご意見・ご感想をお寄せください。

Copyright(c)2001 OtomekougenFunclub. All rights reserved