file No. 0303
Date 2003/04/27
タイトル 雪どけ草原の「えぼじ」 〜2003年4月27日の観察記〜


「えぼじ」とは,ぼくらの地方の方言で「落書き」のことです。整った落書きというより, まだ字も絵も上手に書けない小さな子が書いた,たどたどしい落書きというニュアンスが あります。 雪どけの乙女草原に,毎年,「えぼじ」が出現します。今回は,そのリポートです。


まずは,「えぼじ」を見てください。こんなのが雪どけの草原にたくさん現れます。 しっかり数えたことはありませんが,おそらく100個以上はあると思われます。
「えぼじ」ですから,一つ一つ全部違いますが,注意深く観察すると,共通のパーツが あることがわかります。中には,あるパーツを省略した「えぼじ」もあります。 おもなパーツは以下の4つです。

  1. くぼんだ道
  2. トンネルの入り口
  3. くぼみが広くなっていて,テラスのようになっているところ
  4. 土や枯葉のソーセージ型の堆積物

画面の左のほうに,くぼんだ通り道が見えますでしょ? 冬の間,ここが雪の下だった ことを考えると,ここを「えぼじの主」である小さな動物(ネズミ? モグラ?)が 通路として使っていたことは,容易に想像がつきます。


時には,通路の途中が広くなっていて,テラス状になっているところもありました。 そんなテラスには,糞が積もっていることもありました。



不思議なのはソーセージ状の堆積物です。「ちくわ」のように中が空洞になっていて, そこを「えぼじの主」が通っていたのでは?・・・と考え,いくつかを輪切りにして みたのですが,ポロポロとくずれてしまいました。



また,よく見ると,このソーセージ,ずっと前からそこにあったというより,フワフワと(?) 浮かんでいたのが,地面にそっと降りてきたって感じです。というのも,スライムを地面に 置いたようにヘナッとなってなくて,まさにソーセージをそのままポンと置いたように 見えます。手で触ればすぐにポロポロになってしまうほど柔らかいものが,ちゃんとした形を 保っているなんて,不自然です。



このソーセージのでき方が,ぼくの頭の中ではずっと謎だったんですが,今年,解決のヒントが 見つかりました。それは4月13日のことです。
見てください。雪の上に「ソーセージ」があるでしょう?
冬の乙女高原には約1メートルの積雪があります。それがミソ。つまり,ソーセージ問題を 解くには「二次元的」に考えていてはダメで,「三次元的」に考えなければ答えが 見つからないということです。
ソーセージが雪の上にあったり,中には,雪の中に隠れているソーセージもあったことから, このソーセージ,もともと雪の中にあったものと思われます。地面に掘ったトンネルの残土を 雪の中に押し込めたのでしょうか? それとも、地面から上に向けて掘った雪のトンネルでは 足が冷たくなってしまうので,トンネルの底に敷いたのでしょうか?
いずれにしても,雪の中にメーセージがあって,雪どけとともに,地面にそれが「降ってきた」と 考えると,ソーセージの形が崩れていないことの説明がつきます。



それにしても,だれがどのようにこの「えぼじ」を描いたのでしょうか。その主と会って みたいものです。モグラの仲間? それともネズミの仲間?
トンネルの入り口は直径3−4センチメートル。ほとんどの「えぼじ」に見つかりました。 ちょっと気になるのは,この穴。ほとんど垂直に地面の中に入っています。 こんなに垂直になっていたら,入りにくかったり,出にくかったりすると思うのですが・・・。

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